日本は欧米で流行ったものが遅れて入ってくると言われています。政治や経済、文化的な流行はいつも欧米諸国が先頭を走っているのが現実ですが、残念なことに犯罪の手法も同様の流れをたどっています。数年前からヨーロッパではピッキングやサムターン回し、カム送り解錠などとはまったく違った手法が流行しつつあります。欧米で流行したものが遅れて日本に入ってくるとはいえ、インターネット全盛の昨今ではその速度は昔と比べものになりません。本コラムでは近い将来日本でも流行する可能性の高い不正解錠の手口をご紹介します。皆さまの防犯対策の一助となれれば幸いです。
ヨーロッパで流行しつつある不正解錠の手口に「バンピング」という手法があります。バンピングはバンプキーと呼ばれる特殊な鍵を使って鍵開けを行う技術のことです。バンピングの恐ろしいところは、バンプキーさえ手に入れば誰でも簡単に鍵開けができてしまうという点です。
ピッキングやサムターン回し、カム送り解錠、破綻などは、どれも鍵の構造などの知識と技術がなければ鍵を開けることはできませんでしたが、バンピングはバンプキーを鍵穴に挿入した状態でバンプキーをハンマーなどで叩くことで解錠することが可能です。ちょっとしたコツさえ分かれば初心者でも鍵を開けられるという報告もでていますので相当な注意が必要です。またバンピングが有効な鍵はピンシリンダー錠といわれています。ピンシリンダー錠の特徴としては、キーの片側に鍵山が掘られています。これは防犯性能の高いディンプル系のピンシリンダーであっても同様ということです。バンピングはピッキングと同様に不正解錠の痕跡がほとんど残りません。そっと自宅に侵入され家内を荒らさずに貴重品などを盗難されると、被害に気づくこともなくさらなる被害を生む可能性もあります。バンプキーそのものを作製するためにはそれなりの知識と技術が必要になってきますが、海外で作製されたバンプキーをインターネットで購入することは不可能ではありません。現状では日本で日本の鍵メーカーもそれぞれバンピング対策の鍵を開発していますが、一般的に鍵を数年ごとに交換する人はほとんどいません。数年前のバンピング未対策の鍵を使用している方は大勢いますので、不安に感じる方もいらっしゃると思います。
【バンピングの対策】
バンピング対策としては、バンピング対策が施された鍵へ交換することが一番ですが、面付けタイプの補助錠を取り付けることも有効です。当社では各種鍵メーカーからあらゆる鍵を仕入れておりますので、バンピング対策も確実に施行いたします。
かなり強引な手口ですが、こちらも最新の手口として報告されている「メルティング（溶解破綻）」と呼ばれる手法があります。メルティングは強酸性の特殊な液体を鍵穴に注入してシリンダー内部を溶かしてしまうという手法です。シリンダー内部が金属でできていることを逆手にとって、ドリルなどの攻撃ではなく液体によって溶かしてしまおうなど誰が考えたのでしょうか。液体を鍵穴に注入させ内部部品を溶かしてシリンダー内部の強度や機能を弱らせた上でシリンダーをなんらかの方法で回転させることで鍵が開くので、音がほとんど出ないのも特徴です。金属が溶ける時間もさほどかからず、液体を注入するだけなので特殊な技術を必要としないのも恐ろしい点です。メルティングの手口が有効なのは、ディスクシリンダー錠と言われています。ディスクシリンダー錠のディスクは薄い金属板なので溶けやすいというのが理由です。同じ理由からロータリーディスクシリンダー錠などのディスクタンブラー方式の鍵も狙われるリスクは高くなります。
【メルティング（溶解破綻）対策】
メルティング対策としては、第一にディスクタンブラー方式でない鍵に交換することが先決です。また、鍵穴のないリモコン式の補助錠を取り付けることも有効です。どのような鍵がメルティング対策に最適かは、防犯設備士多数在籍の当社にご相談ください。お客様の現状の鍵の防犯診断から最適な防犯対策まで丁寧にご提案させていただきます。
バンピングにしてもメルティングにしても、今後日本で流行すれば社会問題になったピッキングを凌ぐ被害が起こりかねません。各鍵メーカーも各々新手の解錠手法に対応した鍵を開発していますが、私たち錠前技師もお客様の安全と安心を第一に考え、日々技術の向上に励んでおります。私たちは鍵本来の性能だけではなく、あらゆる角度から防犯へのアドバイスやご提案をさせていただいております。お客様の安心に寄与することができれば錠前技師としてこれ以上の幸せはありません。少しでも不安なことがあれば何でもお気軽にご相談ください。365日年中無休でお客様のもとへ駆けつけさせていただきます。
