このコラムを読んでいただいている方の中にも、2階建て以上のマンションやアパートにお住まいの方が相当数いらっしゃると思います。マンションを住居に選ぶ理由のひとつには、一戸建て住宅に比べて死角が少なく、多くの住民が同じマンション内に住んでいるという点から人の目が多く、空き巣や泥棒などに敬遠されがちで防犯上安心であることがあげられます。しかし一見安全に見えるマンションやアパートにも見落としがちな落とし穴がいくつもあることをご存じでしょうか。自身やご家族の安全を守るために、もう一度お住まいの防犯を見直してみてください。
マンションやアパートで空き巣や泥棒に狙われやすい部屋は？という質問があれば、多くの人は1階の部屋と答えます。その回答は正解ではあるのですが、外部の地面から直接侵入することが可能な1階部分のみが危険で、2階、3階と上層階になるにつれて安全性が高くなるという固定観念をお持ちの方がいることで、ご自身の防犯意識にスキを生んでしまっている可能性があります。このスキが問題なのです。1階にお住まいの住民は、その危険性を認知している方がほとんどですから、お出かけの際や就寝時の戸締まりには常に気をつけています。ところがその危機意識はマンションの上層階にいくにつれて薄れていきます。特に最上階にお住まいの住民ともなると、ベランダの窓に鍵をかけない確率が格段と高くなります。統計ではマンションで空き巣被害にあった階数を調べた結果、1階・2階に次いで被害件数が多いのが最上階となっています。
2階については、地面に設置されている室外機や物置、壁の外に取り付けられている排水パイプなどをつたってベランダに侵入することが想像されますが、なぜ最上階の被害率がこんなに高いのでしょうか。マンションによっては簡単に屋上に出入りできる場合があります。空き巣犯はそのようなマンションを狙って屋上に上がり、ロープを使って最上階のベランダに忍び込むのです。その時に窓に施錠がされていなければ、ものの数秒で侵入されてしまいます。まず心がけなければいけないことは、マンションの上層階に住んでいるからといって、その安全性を過信しないことです。そして、マンションを選ぶ際には屋上につながる通路が無防備になっていないかをチェックしましょう。屋上への通路に鍵付きの扉が設置されていたり、防犯センサーなどが取り付けられているマンションなら安全性は高くなります。
最近の高層マンションでは、玄関ロビーにオートロックを採用しているケースも一般的になっています。オートロックによって自分が許可した訪問者しかマンション内部に入れないような仕組みは一見安心できますが、ここにも大きな落とし穴があります。
なぜならオートロックがあるからといって、見知らぬ人がマンション内に入ってこないとは限らないからです。侵入者はその気になればマンションに入る住民の後を追って自動ドアが閉まる前にマンション内に入ることは簡単です。また、後を追われた住民も見知らぬ人が自分の後に続いて入ってきたからといって気にとめることもありません。これはご近所付き合いが少なくなったという理由もありますが、高層マンションのように何十世帯・何百世帯の住民が暮らす環境では、1度も顔を合わすことのない住民がいてもおかしくないからです。そのことを裏付けるかのように、実際にオートロックのマンションでも訪問販売や新聞の勧誘などは後を絶ちません。その中に空き巣犯が入っていてもおかしくない状況なのです。
オートロックだから安全と過信せずに、玄関の鍵は2ロックにしたり、ベランダの窓は必ず施錠するなどの防犯対策を心がけましょう。
空き巣や泥棒が侵入を試みるのは主に「玄関」か「窓」からの侵入です。特に玄関の鍵をピッキングなどで鍵開けしてしまう空き巣犯のイメージは一般的に強いのではないでしょうか。この玄関からの侵入を観点にマンションの危険性を考えてみます。
ベランダの窓から侵入される危険性は1階が一番危ないことは皆さまもご承知かと思います。ところが玄関の鍵を開けて侵入する場合、マンションのケースだと1階よりも上層階の方が被害に遭いやすい傾向があります。なぜこのような結果になるのでしょうか。それはマンションという住居環境の特性が関係してきます。マンションには多くの世帯が暮らしていますので、1棟のマンションに訪れる人の数も多くなります。先述した訪問販売員や新聞の勧誘、宅配業者やマンションの住民など、数多くの人がマンション1階を通過していきます。このような人通りの多いシチュエーションというのは、空き巣犯や泥棒が一番嫌うパターンなのです。人気の多い場所でマンションの様子を伺っていたり、不審な行動をしていればすぐに怪しまれます。このような理由からマンションの玄関の鍵を開けて侵入されるケースでは、1階部分は意外にも被害が少ないのです。逆に上層階に行けば行くほど、危険度は増していきます。
なぜなら最上階にいる人は、必ず最上階の住民か最上階に用のある人しかいないからです。必然的に人通りも少なくなり、犯行をしやすい環境が作られやすくなってしまうのです。このような環境下でも空き巣犯に犯行を躊躇させるような防犯対策を施すことが大切です。玄関のドアには防犯性の高いディンプルキーなどを採用し、補助錠などを取り付けて1ドア2ロックにするなどの対策を考えてみてください。
緊急鍵当番でもお仕事で多くのマンションに訪問することがあります。そんなマンションの住民でたまに見かけるのが、玄関先やベランダに物を不用意に置いているお宅です。このような住居は意外と空き巣に狙われやすい傾向があります。子供の遊び道具や壊れてしまった家電製品など処分が面倒な物を玄関先やベランダについつい放置してしまう気持ちはわかります。
いつかちゃんと処分しようと思っていていつの間にか年月が経ってしまうこともあるでしょう。本人にしてみれば、どうせ捨てる予定の物だから盗られても問題ないくらいに考えているのかもしれませんが、問題は置いてある物が盗まれることではないのです。先述しましたが、空き巣犯や泥棒は人目を非常に気にします。誰にも見られずに犯行を行うことが彼らの理想なのです。そんな時に玄関やベランダに雑多に置かれた家電製品などの大物の物は、格好の隠れ蓑になってしまう可能性があります。ベランダに侵入し窓の鍵を開けようとしていても、交通量の多い道路に面したマンションなら犯行はしづらいですが、ベランダに身を隠せるほどの物が置いてある場合、空き巣犯の犯行を覆い隠してしまうこともあります。空き巣や泥棒はそのようなシチュエーションを見逃しません。リスクが少ないと思えば犯行を実行してきます。大切なのは空き巣や泥棒に犯行を躊躇させる環境づくりなのです。
近年では戸建て住宅よりも高層マンションを住まいに選ぶ割合が増加していますが、マンションの安全を過信しすぎて不幸な犯罪に巻き込まれないよう、自分の身は自分で守るという自衛の精神と、常日頃からの防犯対策・防犯意識をもつことが犯行の予防になることを忘れないでください。
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